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Evaluation of superconducting boron-doped diamond thin film critical thickness using X-ray diffraction

MetadataDetails
Publication Date2015-02-06
JournalThe Japan Society of Applied Physics
AuthorsMasanobu Shibata
InstitutionsWaseda University

(1.Waseda University, 2.NIMS) E-mail:[email protected] ボロン濃度が 10cm以上の高濃度ドープダイヤモンドは純粋なダイヤモンドより格子定数が 0.2-0.7%増大し、純粋なダイヤモンドとの間の格子不整合による格子歪みが生じ、ある膜厚以上で 面内応力による格子歪の緩和が生じる [1][2]。緩和開始の膜厚を臨界膜厚と呼ぶ。本研究ではマ イクロ波プラズマ(MP)CVD装置において HPHTIb(111)ダイヤモンド基板上へ合成した高濃度 ボロンドープ超伝導ダイヤモンド薄膜の結晶性を X線回折法にて評価し、臨界膜厚の格子不整合 依存性を明らかにした。 ボロン濃度および正孔濃度が約 1×10 cmで膜厚が 450 nm及び 1100 nmの試料の XRDでの 113反射非対称逆格子マップ(RSM)を示す(Fig.1(a),(b))。膜厚 450 nmの試料では歪み層のピークが 支配的に現れ、緩和初期の面水平方向へ伸張する帯状のすそが見られる。これは臨界膜厚がこの 膜厚付近に存在することを示し、これを“緩和開始”の膜厚とする。一方、膜厚 1100 nmの試料 では歪み層及び緩和層の2個のピークが明瞭に確認できる。これは完全な結晶格子緩和を示すの で、 “完全緩和”とする。Fig.2 には格子伸張率から求めた格子不整合と膜厚の関係を示す。さ らに、格子不整合と格子緩和開始膜厚を計算した People and Bean、Van der Merwe、Matthews and Blakesleeによる 3通りのモデルの理論曲線を示す。図中の(a)、(b)の試料は Fig.1(a)と(b)の試料に それぞれ対応している。臨界膜厚は、逆格子マッピングにおいて緩和が確認され始める際の膜厚 から推定した。本研究の結果より、ボロンドープダイヤモンド薄膜の臨界膜厚は People and Bean の理論曲線にフィットすることが明らかとなった。ダイヤモンド構造を持つ SiGe 系を基にした People and Beanのモデル[3]に高濃度ボロンドープダイヤモンドが適合することは、このモデルが ダイヤモンド構造全般に成り立つことを意味している。 People and Beanの理論は、臨界膜厚前後でミスフィット転位の導入を前提としている。高濃度 ボロンドープダイヤモンドにおいて、表面ラフネスが数十 nm 以上となる試料が度々確認されて いたが、我々はこれがミスフィット転位の導入によるものではないかと仮定した。そこで、ミス フィット転位の導入前後による表面ラフネスの変化を原子間力顕微鏡を用いて測定した。450 nm の試料(a)の二乗平均面粗さ(RMS)は 6.0 nm、1100 nmの試料(b)の RMSは 12 nmであった。こ れは、前述の仮定を裏付ける結果となった。即ち、ボロン濃度が 1×10 cmを超える高濃度領域 では、臨界膜厚が数 μm 以下となるため、低濃度領域では考慮する必要性の無かったミスフィッ ト転位の導入による表面ラフネスの増大が生じる。これは、積層構造の超伝導デバイスを作製す る上では臨界膜厚を議論する必要性が生じたことを意味している。